あの人と私だけのてばなし 後編

以前通っていた施設で明るかった彼。
またその頃のようになれたらいいな。
そんな彼が見たいな。

もともと聴覚に障がいを持っていた彼が、失明するまで使えていた手話をなんとかしアレンジしたら交流でるんじゃないか?と思ったのです。

彼の両手をとって、私に引き寄せた状態で
「おはようございます」
の手話をしたのは、挨拶したいのは【私】だったから。

手話、てばなし®️の基本。
【位置を示す(だれが?どこで?)】

「あんた手話できるんか?」
と、もの凄いスピードの手話で質問されました(笑)

手をとったまま
「もう少しゆっくりはなしてほしいですー」
と伝えると

「わかったー」
とトントンと胸を叩く彼。

そこから、少しずつ彼と私の交流が始まりました。

正式な触手話を知らない者同士、
手をとったままいろんな手話表現を試し合いました。

「お互いが通じればいい」

と、とにかくあれこれやってみました。

そんなやりとりをするようになった結果、半年後には二人で彼の母校である聾学校へ遠足に行くまでになりました。
*最寄り駅でお寿司食べに行ったりしたっけ(笑)

作業所内でも内職を一緒にする日ができたり、行きたいときにお手洗いに行きたいと意思表示してくれるようにもなりました。

交流をするなかで…

彼との交流を積み重ねて行くなかで、編み出したこと。

<手づくりオセロ>
見えていた頃、オセロが好きだったとおっしゃったので、
旅行用のミニチュアオセロを入手。

黒い方の駒に点字シールの「・」ポチを貼って、盤面のマス目に沿ってボンドを盛り凸の枠を作って遊んでいました。
*勝っても負けても声を出して感情を表す姿がお茶目でした。

<イケマセンよ…の合図>
両手にふれて話す。
通常の会話よりお互いの距離が近い。

このことがマイナスにはたらいてしまうことが時々ありました。

両手にふれて話すのが嫌にならないで欲しかったので、私にとって
「それは困るな」
という状況が起きた場合は、その場で直接伝えずに一旦会話を中断してから彼の肩に片手を置きつつ背後からもう片方の手で

「それはイケマセンよ」
の意味を込めて、背中に大きく【X(バツ)】と書いていました。
察しの良い彼は、その合図の意図を一発で汲み取ってくれたのでした^^

<ふりかえってみて>
この頃の出来事が、今の『てばなし』に繋がっているのかもしれないなぁと思います。

・あの人と私だけのてばなし
・家族の間だけのてばなし
・スタッフ同士でつくったてばなし

あなたの暮らしのなかでも
いろんな場面で、いろんな人と、いろんなカタチの表現が生まれ育ってくれたら嬉しいな。

あの人と私だけのてばなし・完